朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
しかし、柚には後ろ盾がない。


この煩い大臣たちを黙らすにはどうしたらいいのか思い悩んでいる時だった。


貴次が口を開いた。


「帝は朱雀の巫女の御力を利用しようというお考えなのですね。

今、宮は物の怪で前代未聞の危機に陥っております。

朱雀の巫女を手中に収めれば、朱雀の強大な力を手にしたも同然。

政のために結婚を決意してくださったのでしょう。

物の怪の脅威がなくなれば、朱雀の巫女は用なしになるので、次は帝が気に入る高貴な娘を妻に娶ればいいだけのお話です。

さすがは帝、ご高名な考え方でございます」


 貴次の見解に大臣たちはなるほどと感心した。


それならば仕方ない、物の怪を退治することが先決だと言いだした。


「そうなのでございましょう? 帝」


 貴次は更に押しの一手を踏み込んできた。


暁は単純に柚が気に入っただけで、朱雀の力を利用しようとはまるで考えていなかったので、貴次の言葉に驚いていた。


ああ、なるほど、そういう方法もあるのかと感心したが、物の怪は自分の力で倒すと固く誓っていたので、今後も柚の力を借りる気はない。


しかしこの場を収めるには、貴次の話に乗っかる方が賢明であることは確かだった。


それに後ろ盾のない柚のことも心配の種ではあった。


心ない輩に嫉妬され、嫌な思いをさせたくなかった。
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