朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「柚が勝手にうろちょろして迷子になったら大変であろう。余の親心だ。

それに行く所もなかったのであろう?

ここなら衣食住心配することはないし、何より余の側におれるぞ」


 暁はニコニコしながら言った。


無理やり連れてきたことに、微塵も悪いとは思っていないようで、それどころか、ようやく柚と二人きりで話せて嬉しくて仕方がないというのが全面に出ていた。


「暁の側にいることが問題なんだ! なんだよ妃って! 私はお前と結婚する気なんかないぞ!」


 すると、それまでニコニコしていた暁の顔が曇った。


「……なぜだ?」


 暁は主人に捨てられた仔犬のような目で悲しそうに言うので、柚はなんだか凄く酷いことを言ってしまったような気になった。


「なぜって、そりゃ、まだ会ったばっかりだし、お互いのこともよく知らないし……」


 柚はなぜかきまりが悪い心持ちがして、目を泳がせ言い淀んだ。


するとさっきまで悲しそうな顔をしていた暁の顔が再び明るくなった。
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