朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
つい先ほども、更衣室で着替えていたら小さな女の子の幽霊が見えてしまい、女子生徒たちが柚を待っているにも関わらず、逃げるように体育館から出てきた。


精神を鍛えるために剣道を始めたけれど、やはりまだ怖いものは怖いのだった。


一度見たらしばらく震えが止まらない。


チラリと見えただけなら、以前のように大きな声で泣き叫ぶということはなくなったが、真っ青な顔でふらふらと歩く姿を皆には見せられない。


そういうわけで、本日のスターであるにも関わらず、月島柚は逃げるように会場を後にしたのである。


(ああ、怖かった。なんで伝統ある体育館って幽霊が出やすいんだろう)


柚は心臓をバクバクさせながら、体育館近くにある自然公園の中を歩いていた。


道路を通るより、自然公園の中を突っ切った方が駅に近いからである。


そのまま進めば徒歩5分ほどで駅に着くのだが、自然の木々や花々を愛でるのが好きな柚は、ついつい道を逸れて公園の奥の方へと進んでいった。
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