朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
彼女が男に間違えられるのは、何も顔立ちだけのせいではなかった。


背筋を伸ばして堂々と歩く凛々しい姿。誰かに媚びるような態度を一切見せない精悍な顔立ちは、同年代の女子たちと一線を画している。


どこか浮世離れした雰囲気は、女子生徒を虜にした。


女子生徒たちは柚に理想の男性像を勝手に押し付けるので、元々優しい性格で周りからの期待に応えようとしてしまう柚は、男らしく振る舞うことを覚えた。


しかし柚本来の性格は、可愛いぬいぐるみや綺麗な花が好きだったり、女の子らしい一面もある。


だが、そんなものが好きだと周りに知られたら柚を慕う女の子たちががっかりするのは目に見えていたので、隠し通していたのだった。


そしてもう一つ、柚が頑なに隠し通してきたことがある。


それは、幽霊が見えてしまうということだ。見えるだけならそこまで頑なに隠さなくてもいいのだが、柚は幽霊が死ぬほど怖いのだった。


見えてしまった瞬間、誰彼構わず側にいる人に抱きつき、身を縮めて泣き叫ぶ。


小さい頃はまだ、怖がりな子と認識される程度で良かったのだが、十八になってもまだ全然慣れない。


凛々しく男らしいと思われている柚の泣き叫ぶ姿を見られたら、失望されると思った柚は、精神を鍛えようと剣道を始めた。


めきめきと上達した柚は今では選抜大会で優勝するほどの腕前となった。


すると、更に女子生徒から人気が上がり、柚はその期待に応えようと、更に男らしく振舞ってしまうのであった。
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