エンドレス・ツール
そんな翔さんが豹変したのは、あたしが泣き止んで涙を拭いた直後だった。


泣いても意味などないと働かない頭で理解し、罪悪感に苛まれ「ごめんなさい……」と言って頭を上げたら、翔さんに頭を撫でられた。


「泣いてるりーは嫌い」と言われ軽くショックを受けた。まあ、当たり前と言えば当たり前だ。


泣き顔が好きとか、どこの変態だって話だ。


「……もう泣きません」と呟くと、翔さんがいきなり「でも……」と、あたしの耳に唇を近づけた。


「泣き止んだ時のりーはそそられる」


え？と思った時には既に唇は重なっていた。


初めてのキスは一瞬で離れ、その後すぐに激しいキスと共に崩れるように二人の体はベッドに沈んだ。


初めてのキスの感想を考える暇もなく、あたしは翔さんに身を委ねた。


そこからは記憶がかなり曖昧だ。


覚えていることは、全身に降った翔さんの唇の熱とそこから漏れる熱い吐息。あたしの体をなぞる指。そして、全身が真っ二つになるような錯覚さえ覚えた長い痛み。


ただ、それだけがあたしが翔さんに抱かれたという証だった。


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