エンドレス・ツール
「璃里香の好きな人は、翔さんやで」


後ろで声がしたと思ったら、あたしの後ろでなつがすごい形相をして仁王立ちしていた。


「な、なんであんた帰ってきたの?」

「校舎一周してきたけど、ケイゴくんなんてどこにもおらん。璃里香、騙したな」

「いや、あんなんで騙されるなつに驚いたよ」

「ムカついたから、ムカつく高橋にあんたの情報流したる」

「わー、ありがとう!」

「いや、おかしいよね。それ」

「あ?」

「いや、なんでもない」


もう、なんなんだ、これ……。


「でもなつ、翔さんってだけ言っても高橋くんわからないと思うけど?」

「あ? じゃあフルネーム言ったろか。瀬戸内翔」

「もうどうでもいい」

「……翔?」


高橋くんが、初めてしかめる顔を見せた。





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