恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「返事はすぐじゃなくていいからさ」


あたしが答えるより先に、山岸が言った。

気まずさに逸らしていた視線を山岸に戻すと、そこにはいつも通りのペットの山岸がいて。


告白の返事をする雰囲気じゃなくなってた。


「あんま深く考えんなよ。

オレと朱莉だったら上手くいくと思ってさ。

オレ優しいしめっちゃくちゃ大事にするし! 朱莉だったらなんでも許せるし!

……多分」


へらへらした笑顔で自分をアピールする山岸を見てたら、緊張の糸がぷつりと切れる。

思わず笑うと、山岸もにっと笑う。


教室には、もう気まずい雰囲気なんて流れていなかった。

代わって、山岸が作り出すいつも通りの心地いい雰囲気がその場を仕切る。




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