恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
そう思ったから、意を決して山岸を見上げた。
じっと見つめると、それに気づいた山岸があたしを見る。
その顔は……、やっぱり少し怯えてるみたいに見えた。
「山岸……、お願いだからちゃんと聞いて」
ちょっとだけ黙ってから、山岸が目を逸らして軽く笑う。
「やだ」
「山岸……っ」
「ごめん、朱莉。俺、諦めねーから」
ハッキリ言われて、言葉を奪われる。
HRが始まる5分前の玄関は、たまに走りこんでくる生徒がいるだけで静かだった。
誰かの足音がパタパタと響く中、目を逸らしていた山岸がやっとあたしを見る。