重なる身体と歪んだ恋情

「どうかした? 如月」

「あ、いえ……」


ハッとして、それでもやっぱり不思議そうに私を見下ろす彼。


「他にどこか、変わったことは?」


何を言ってるのかしら?


「あ」


そういえば。


「この指……」


右の人差し指が包帯でぐるぐる巻きだわ。

少し血も滲んでて――。


「割れたグラスの破片で少し切れていました。包帯を巻いたのは弥生です」


言われて昨日の夜を思い出す。

そうだったわ。

その後からの記憶が無いのだけど。


「千紗様は酔いが回ったのかそのままおやすみになられたのです」

「……」


なら、この頭の痛みは世に言う二日酔いってものかも。

体のだるさもそうなのかしら?

指を切ってから記憶が無いけれどここまで運んでくれたのは、如月?


「どこか他にお怪我でも?」


だから、心配そうな如月の声にはフルフルと首を振って、


「大丈夫よ。ありがとう、如月」


そう答えると、やっぱり如月は不思議そうな顔をいっしゅん見せて、


「朝食の準備が出来ております。お着替えを」


ドアの外、待っている小雪に入るよう促した。



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