重なる身体と歪んだ恋情

これから私は彼の手の傷を見るたびに、彼の愛を確認したくなるだろう。

だけどそれは言葉だけでは計れなくて、目には見えなくて。

だから身体で感じることしか出来ないのに、

顔を寄せた彼のスーツから微かに香ったのは白檀の香り。

思い出したのは、『新橋の葛城』で……。


ねぇ、お願いだから、


「もっと、私を愛して――」


そう伝えると彼は包帯を巻いた手で私を抱きしめて、


「えぇ、誰よりも」


ベッドに私を押し倒した。


彼が私を傷つける。

その傷が消えない限り、私は彼の愛情を感じることが出来るのかもしれない。


「あっ……」


たとえ感じるのが身体だけだとしても。


身体は重なるのに、

心は重ならない。

だけど身体は感じて彼を求める。

これも愛だと呼べるのかしら―?


私の手からペンダントが落ちる。

そして、ペンダントが開いたことに私は気づかなかった。
< 307 / 396 >

この作品をシェア

pagetop