重なる身体と歪んだ恋情

脱衣室まで行って彼女をタオルでくるむ。

さて、どうしたものか。

外にいるのは――。


「誰かいますか?」

「はい」


聞こえてくる声はひとつだけ。やはり弥生だけか。


「小雪はどうしました?」


彼女つきを命じてるはずなのに。

私が風呂に入ったとき、表には誰もいなかった。

如月がいないのは分るとして、小雪までいないのは一体?


「小雪は既にお休みを頂いてます」

「千紗さんがここにいるのに?」

「えっ?」


なら、彼女がそう命じたのか。

そして誰の目もかいくぐって風呂に……。

その顛末が容易に想像できて思わず口角があがる。


「まあいいです。彼女に服を着せるのを手伝ってください」


そう言うと「失礼します」と開けられる扉。

バスローブ一枚の私の姿に一瞬赤くなるのが分かったが、弥生はすぐに視線を私から逸らし千紗を見た。

そういう仕草が堪らない。

それから器用に彼女に寝巻きを着せて。


「千紗様をお運びするのに誰か呼んで――」

「いや、私が運ぼう」


私の声に弥生は少し驚いた表情を。

けれど構わず寝巻きを纏った彼女を抱き上げて、


「開けてください」


そう言うと弥生は「申し訳ありません」と頭を下げて扉を開けた。
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