重なる身体と歪んだ恋情
「タクシーよりも絶対に早いし、安いでしょう?」
我ながらいい考えだわ。
そう思ったのに如月の顔は渋い。
「おっしゃる通りですが鉄道は不特定多数の人間と同じ空間をともにしなければ」
「そんなことくらい分かってるわ。でもタクシーに乗るにしたってどうせ東京駅まで行くのでしょう? それなら鉄道に乗ったほうが合理的だわ」
そう言い張る私に如月は少し悩んで、
「分かりました。ではそのように」
軽く頭を下げると空になったスープ皿を下げていった。
わがままだったかしら?
でもわがままだけじゃなく、ちゃんと経済的なことも考えてのことだもの。
自分にそう言い聞かせて小雪の入れる紅茶を口に運ぶ。
東京駅。
まだ出来たばかりといってもいいくらい。
前に行ったのはまだお父様もお母様もいらっしゃったときだ。
懐かしい。
そう言ってしまうのはおかしいかもしれないけれど。