紫水晶の森のメイミールアン
 小さなメイミールアンは絶望で胸が締め付けられ、庭に放置された衣装箱に突っ伏して泣き続けた。

 どのぐらい泣き続けただろう……。気がつけば日は沈んで、辺りは恐ろしい闇が迫って来ていた。あんな恐ろしい石の家にはとても住めない!!だが、葉が色付き始めた秋の今頃は、外で一夜を明かすには寒すぎて風邪をひいてしまいそうだ。

 どうしようかと考えて、衣類を詰め込んだ大きな木箱の中に入ってガタガタ震えながら一夜を過ごした。大きな木箱は小さなメイミールアンがスッポリ入るぐらいの大きさだったし、上質な絹のドレスや毛織物や毛皮のコートやショール等は温かで、厚手の立派な木箱は保温性も十分で、何とか一夜を過ごす事が出来た。

 ほんの少し、空気口の為に衣装箱の蓋に隙間を空け、そこから目だけキョロつかせて恐る恐る外の様子を見たら、後宮殿が見えた。暗闇を煌々と照らす幻想的で眩い光。昨日まではあそこの一番広くていいお部屋にいたんだわ。とても帰りたい。あのお部屋へ?いいえ……。祖国リリカルドヘ帰りたい。父上様、母上様、兄上様達は……?!聞けば嘆きの魔女の呪いによって、国丸ごと暗黒の渦に飲み込まれ、その後あの場所は人の住めぬ迷宮の森と化したとか。

 ――こんな所でメソメソ泣いている場合ではない!!祖国の家族や民の事を思ったら、なんて私は恵まれているのか!!

 まだ小さすぎて力の無い非力な私。だけど、知恵と力をつけて、帰ろう…。迷宮の森と化した場所でも。祖国へ…。

 その為に、生き延びよう!!いえ…生きなくては!!
< 11 / 26 >

この作品をシェア

pagetop