色恋
●眠らない街●

逃避

ここは新宿歌舞伎町

人間の欲望という弱さを
感じるこの街は

弱い者は
強い者に飲み込まれ

強い者だけが生き残る


流されぬように
必死に立っている
奴もいる
もがき苦しむ奴もいる

けれど淋しさを抱えた
者達すべて包み込むよう

ネオンと彼は

今夜もあなたに
微笑みかける……

歌舞伎町売上No.1ホスト

如月 龍
Ryu Kisaragi

在籍店 Dragon Rising



「すげぇー龍サンまた
週刊誌に載ってるぞ!」

「もぅその雑誌見たよ。
こっちにも載ってるし」

「でも龍サンが客に微笑み
かけてるトコ見た事ナイケド」


真冬の街灯の下
Dragon Risingの新人ホスト
3人が借り物のスーツを着て
キャッチ(客引き)をしている。


「おはよ〜。」
上下白いスーツを着用し
白いコートを羽織った
長身の男が現れた
スーツの白さが顔の黒さを
引き立てている
寝起きなのか
不機嫌そうな表情だ

ここは眠らない街、新宿
深夜でも人の顔色が伺える

「げっ!海斗(カイト)サンだ!
しかもご機嫌ナナメだし」

「おぃ!聞こえるゾ!
雑誌しまえョ!」


「おはようゴザイマス!」


3人は大声で挨拶した。

海斗は
Dragon Risingの代表。
売上は常に5本指に入る


「チョット来い!!」


海斗の大声は
この冬の寒さ以上に
新人ホスト達を凍りつかす
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