サワーチェリーパイ
大盛り上がりのボックスシートの様子を、チラっと見ながらキザったらしい足取りで近づく少年が居た。


容姿はマーティンと同じハーフで、髪型は天然の巻き毛。


そして、その下に付いている顔は、タレ目にやたらと高い鼻。


街を歩けば、必ず女の子が振り返る程の嫌味なまでの美男子。


「ナニ、マタハルトフラレター? 」
「アーリオ、止した方がいいよ。いつもの事だし」


アーリオと呼ばれた少年は、シートの端へ長い足をわざと振り上げて座る。


「マーサ、ウノ・エスプレッソ」
「エスプレッソは無いわよ、アメリカンならあるけど」
「ショーガナイ、ジャ、ウノ・アメリカン」


この会話は、アーリオがここに通う様になってから、毎日繰り返されていた。


「出たよ、毎度のイタリアンジョークが」


そんな台詞を言いながら、浮かれた足取りで近づいて来た少年がシートに座る。


晴斗や三次と同じ詰め襟を着て、顔は典型的な三枚目。


丸顔に、ちょっと低めの鼻、おまけにタレ目だ。
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