オートフォーカス
「それに就職するには修士課程を修了した方が後々に有利だからってので院を目指し始めた位だ。あいつらに比べたら実にふわふわしたもんだよ。」

雅之は肩をすくめて苦笑いをする。

自虐的に聞こえるが表情はどこか清々しいものだった。

しかし次の瞬間、雅之の表情は曇る。

「夢を追いかけて叶えようとする。その姿だけでも羨ましく思えるのに、あの2人は確かな絆で結ばれてるのも…正直言って憧れる。」

憧れ、雅之からまさかの単語が出てきたことに篤希は目を丸くして驚いた。

「憧れる…確かな絆?」

コーヒーを流し込む雅之は小さく頷いたことで返事をする。

「多分、あのまま結婚するんじゃないか?それくらいに相手を思い合い、尊重しつつも並んで歩いている。高校の時から見てるけど…見事な安定感だ。」

雅之はまた穏やかな、優しい顔付きになった。

「遊びのない、自然にできた本気の恋愛なんだろうな。」

篤希は初めて触れる穏やかな雅之の雰囲気に引き込まれていた。

憧れているその部分は篤希にもよく分かる感情だ。

< 196 / 244 >

この作品をシェア

pagetop