オートフォーカス
「若いって言われてもさ?俺たちもそれなりに年を重ねてる。あの2人見てると軽い恋愛はもう卒業して最後の恋を視野に入れた方がいいのかもなって思うわ。」

「最後の恋?」

「そ。最後の恋人ってやつ?」

それはつまり結婚ということだと篤希は悟った。

高校時分から彼女が出来ればこのまま結婚したいとよく言っている友人がいたが、雅之はそれとは違うものだと雰囲気で分かる。

ちゃんと未来を見据えた言葉、少なくとも感情面でのボーダーラインを作っているように感じた。

「のわりには…相手がかなりいたんじゃないの?」

「俺は毎回本気よ。」

雅之の返答に篤希は笑ってしまう。

雅之と会ってから少なくとも指を何本か折れるくらい相手がいたのを覚えているのだ。

「毎回本気で好きになれるか見極めようとしているのよ。俺はね。」

缶コーヒーに口をつける、その雅之の横顔は冗談を言っているものではなかった。

彼なりに探しているのだ。

隼人たちに憧れて最愛の相手を見付けようとしているのだ。

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