緋~隠された恋情
『もういらない』

それは私のどこかにに風穴を開け

スゥスゥとすきま風を取り入れ、

滞留して止まっていた私のいろんな場所に

GOサインを送る。


うああああああ…


声と共に

体中からドロドロとしたものが、

こぼれ落ちていく気がした。


ドアのそばに人の気配があって、

かすかに影が動いた。

平なんだろうか。


あなたも泣いている?


ねえ平

私達の間にあったのは愛ですか?

憎悪ですか?



私の異変に気がついたドクターやナースが

慌ててやってきて、

診察をし、

注射を一本点滴に打ち込んだ。


まるですべて儀式が終わったかのように

静かに

眠りに落ちていった。


暗闇が少しずつ明らんでいく


それは長いあいだ欲しくてたまらなかった


深い眠り。








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