緋~隠された恋情


「もう、終わりってこと?」



「初めから何かあったか俺たち

 あぁあ、

 つまんないんだよな。

 挑戦的な目で俺を睨んでくる気の強いところ気に入ってたのになあ。


 俺、綺麗好きなんで

 壊れちゃったモノは捨てないとな。


 ホントは、もうとっくに飽きてたんだよ。」


汚いものを見る目なんかじゃなかった。


「平?」


「せいぜい、慰めてもらえよ」


その言葉が最後だった。

私の視界から消えて、


ドアが閉まる音がした。

姿が見えなくなった平に向かって

呼びかけた。


「何もなかった?

 あたしたちって何もなかった?

 ねえ!


 ねえ平!

 答えてよ!」



点滴に繋がれ、首をギブスに固定されている私には、

声でしか、追いかけることができなかった。


表情を見ることはできなかったけど、

多分あいつは泣いていた。



だとしたら何のための涙、

私の怪我した心配しての?


自分のした事の後悔の?


私に対する懺悔の?


手放すさみしさの?


出会って10年以上経つけど

平の泣いたところは初めて見た。


私に対して、常に冷淡で、ものとしてしか扱わなかったのに

「もういらない」は、

まるで平の愛の告白に聞こえた



死にたい



何度も思った。



それでも、体を重ねるうちに

平に染まって欲しがる体に

嫌悪して、

さらに自ら塗り込めた。


終りが来るなんて、

生きてるうちには無いと思った。



いつの間にかお兄ちゃんへの思いを守っているのだと、

お兄ちゃんを傷つけないためだと

自分に言い聞かせて、平と貪りあった身体の関係は、

いつしか私の一部だった。




ほとんど動けない私

でも、その瞳からは涙がこぼれている感覚はなんとも不快で、

拭えないもどかしさに

さらに不快感を増長させる。



< 115 / 238 >

この作品をシェア

pagetop