緋~隠された恋情
-----……

「いい部屋だな」


「お兄ちゃんが勝手に決めたくせに。

 座って」


部屋を眺め回しているお兄ちゃんに、

呆れた顔して、

インスタントコーヒーを置き、

テーブルに席に座るように促した。



「そうだったな、我ながらいいチョイスだ。」


「どこにいたの?」


「早速本題か?

 実際、お前のことは色々間に合ったけど、

 自分の身の振り方までは手配できなかったんだ。


 そしたら、お前の持ち物に、

 小畑物産の中途入社の応募書類と、

 推薦状が入ってただろ?」


「あ、もしかして、鮎川さんから預かった?」



「そう、あれ。

 で、藁にもすがる思いで、

 面接に行ったんだ。


 そしたらさ、

 即採用されて、

 行き成りアメリカに飛ばされたんだ。」



「は?」


「コロッケだよ。

 あれを社長がいたく気に入ってくれてて、

 ファンだってやたら褒めてくれて、

 向こうで新事業を立ち上げるのを手伝えって、

 連れて行かれたんだよ。」


「コロッケ?」


「じゃがいもはむこう本場だろ。


 けど、コロッケって食べる習慣はあまりないみたいで

 それを売り出そうって思ったらしくて、

 行き成りアメリカに連れて行かれてさ…


 ん?

 ありさ聞いてる?」



なんだか嬉しそうに目をキラキラさせて話すお兄ちゃんに、

腹が立つやら、嬉しいやら、

ぐちゃぐちゃな感情が溢れ出した。



「ばっかじゃないの!」



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