緋~隠された恋情
必要とされているのなら、

もう少し頑張ってみようか?

鮎川さんの言葉にすっかりその気にさせられてしまった。

辞めることなんて、簡単にできる。


そうだよね、

あんなこだわって守ってきた店も、

商店街も、

あんな簡単にあっけなく終わりを迎えた。


「今回上手く企画が通ったのは、

 仲野さんのあの、揚げ比べ企画。

 あれが決め手だったと思う。]


「そうでしょうか?」


「本当よ?

 途中レンジを使ったり、

 冷蔵庫の解凍機能を使ったり、

 目から鱗だったわ。


 電力会社側の人たちも感心してた。

 いつもやってる親子料理教室とかより面白いって、

 喜んでたじゃない?

 素敵なアイデアだったわ。

 さすが行列のできるコロッケ屋さんの職人さんね。」


一瞬『ありさのおかげなんです。』

と言おうとして、辞めた。

ありさのこと、妹と言いそうになったからだ、

こういう時なんて言うべきなのか、

恋人というのも変だし、

妻と呼ぶのもまだ早い。


ああ、もうほんと早いとこ形をつけて、

きちんと人の話せるようにしなくちゃだな。




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