緋~隠された恋情
いつだって、

私のそばで助けてくれたやさしい手。

思い出す。

あなたはいつだって、

私の困った時そこにいてくれたんだ


だから今があるんだよね。


-----------……

私のSOSに駆け付けてきてくれた新ちゃんは

水樹先生をタクシーで送って、

その後、

電車でアパートに向かう。

となりで並んで、

揺られながら何故かだまったまま、

でも、

それさえ、幸せな気持ちになる。


そばにいる人の体温って、

触れてもいないのに分かるんだな。

だからその温度を確かめたくて触れたいって、

思うのかもしれない。



「お兄ちゃん……」


「ん?

 ああ、久しぶりだな、そう呼ばれるの。」


「新。」


「お?」

「ねえ、私、まずはここから始める。」


「?」


「私が、新ちゃん呼ぶってこと、

 今の関係性が表われてる気がしない?

 この前、言ってたじゃない?


 『本気で結婚しないか』って、

 私は私なりに考えたの、

 お互い好きだって確認して、

 一緒に住んで、ベッドも一緒で、

 本当の結婚したら、

 いったい今までと何が違うんだろうって。」


新ちゃんはじっと私の顔を見つめ、

私の手に指をからめた。


きっと何か答えを用意してくれてるってわかったけど、

私はあえて言葉をつなげた。

  
「新ちゃんに守られて、

 独占できるってことが、決まってて、

 だから、結婚なんてしなくてもいいやって、

 そう何となくだけど、思ってた。
  
 新ちゃんはそれじゃ嫌なの?」

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