緋~隠された恋情
「おめでとう」

「おう、ありがとう。」

「ありさちゃん幸せそうだ。」

「うん」

ありさの同僚の兄である水樹、

高校退学して、会うこともなかったのに、

ありさのおかげで、

友人として付き合うようになった。


「なあ、聞いてるか?

 植木平、こっち帰ってきてるって話だ。」

「平が?」

「なんでも、事件前に付き合ってた女に子どもができていたらしい。」

「子ども?」

「ああ、親が知って、二人を結婚させるつもりらしい。」

「へえ?記憶戻ったのか?」

「いや、よくわからないけど、

 以前の記憶は全く戻ってないみたいだ。」

「会えるのか?」

「どうかな?噂で聞いただけだし、

 昔を知るやつとは会いたくないんじゃないか?」

「そうか」

「悪い変な話、祝いの席で話すことじゃないな。」

「いや、そうでもないさ。」

『一樹の蔭一河の流れ他生の縁』か、

多分、あいつとも切れない因縁があるはずだ。

きっとまた、何かの形で繋がっていくはずだ。

俺とありさと平

苦しみもがきながら、

その繋がりに縋っていた。


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