緋~隠された恋情
「後悔しているの?

 僕にあったこと?」


背中から突然声をかけられびっくりした。

「シオン…そんなところにいたの?」


「後悔してるんだね?」


「後悔なんてしてないよ。

 シオンに会えたことは奇跡だと思ってる。」


「なら、僕だけのものになってよ。」


「シオン」


「徹平、お願い愛してるって言って。」


「シオン…」


「言ってよ…」



アイシテル




ただその一言をどうして言えないのだろうか、


認めてしまえばいいのに


俺はゲイなのだと…


体の関係をもって尚、

社会的体裁を保とうとする俺は

卑怯で、意気地なしだ。



泣き崩れるシオンにただただ戸惑う俺だった。



それが

そんな俺の曖昧さがシオンを傷つけ狂わせていることに、

こんな状況になるまで気がつかなかった。



バスルームで行為をしていた時、

まるであそびのひとつのように風呂場の

水道にカシャリと手錠で俺を拘束した。


初めは冗談だと思った。


けれど、その拘束は二度と外されることはなかった。


食事も排せつもすべてシオンにコントロールされた。


そんな状況でも俺は何度もシオンと身体を結び、

そんな状況でも快楽を得た。


まるで、この世のことではないような、

不思議な感覚で、逃げたいと思う反面、

このままここにいたいとさえ感じる。


俺は狂っているのだろうか。






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