緋~隠された恋情
徹平の部屋と同じ間取りの、

その部屋は、

ごちゃごちゃと生活用品が積み上げられたその部屋は

外からの光も一切入らない。


あの無機質な人気のない部屋とは逆に、

何かの巣穴のように

ジメリとした怪しい空気で充満していた。


体の中から湧き上がる嫌悪感。


一体なんなの?


「ちょっと、あんた何?出てってよ。」


「徹平はどこ?」


「何言ってるの、誰もいないでしょ?」


「だって声が…」


「出て行ってください。」


その人の声は震え、目は怯えていた。


「徹平!!いるんでしょ?」

私は声を振り絞った。


「ありさ…?」


どこからか聞こえてきたその声は確かに私の名前を呼んだ。


そしてキッチンのとなりの扉の向こうに人の気配を感じた。

バスルーム?


「徹平!」


私はその扉に手をかけた、


「やめて!」


追いすがる彼の手を振りはらってドアを開ける。


「やめて~!」


そう叫ぶ声を背中に受けながら…






< 65 / 238 >

この作品をシェア

pagetop