緋~隠された恋情


「植木先生。ちょっと。」

放課後、

校長室から顔を出して教頭が俺に手招きをする。

「はい。」

なんとなくそろそろかと思っていたから、

話の内容はわかっていた。


「忙しいところ悪いね。」

窓際の椅子に深く腰掛けていた校長が、

笑顔で俺を迎えた


「いえ。大丈夫です。」


「まず、仲間くんのことだけど、

 彼女はいつまで、欠勤するのか聞いているかね?」


「怪我をされたお兄さんが、意識を取り戻したそうです。

 近日中に復帰できると思いますが?

 事務室の方には連絡が入ってるはずです。」


「彼女は臨時教員なのでね、

 基本これ以上欠勤が続くと切らざるをえないのだがね。」


「そうですか、

 しかし校長。

 そうでなくても理科の教員は少ないのに代わり見つかるものなんですか?

 それに同じ教科担当として、

 十分フォローはしているつもりですが?

 不足でしょうか?」


「まあ、そうなんだが、

 いつまでもそういうのでは君も大変だろう?

 しかし、

 偶然いい人が見つかってね。

 明日からでも着任できると返事がもらえてね。

 どうだろう?

 この際その人にお任せするということで。」


隣に座る教頭に目配せしながら、

口角を上げて合図し送っていた。

校長は暗に決定事項を伝えているだけなのだ。


まずいな、

少なくとももう2~3日は、

ありさは復帰できないだろう。


本当は、まだ、意識が戻っていないと、

今朝、確認したばかりだ。


代わりが見つかったとなると、

まず、ありさがここに残るのは難しいだろう。










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