緋~隠された恋情

「君から仲間先生に、

 このことを伝えてもらえないだろうか、

 戻れるつもりでいては気の毒だ。」


嫌な役回りをやれってか?

ふっ、いつもながらキール役を引き寄せるなあ、俺。


「なるほど、

 決定事項ということですね。

 判りました。」


「いや、理事長に相談の上決定することだよ?

 だが、大方そうなると思ってもらっていいだろうが」

ちょっと視線を外して、

気まずそうにそう答えた。


まあ、いいさ、

すぐ呼び戻してやるさ。

この学校程度の人事なんて簡単に動かせるしな。


「校長先生。

 そういえば、この間久しぶりに叔父にあったら

 日頃の学校経営には感謝していると、

 よろしく伝えてくれと言っていましたよ。

 近いうちにまた、ご一緒したいと。」


「お、そうか理事長、いや、叔父上には、

 この間私的にご寄付をいただいて

 こちらこそ、

 ご一緒できることを楽しみにしていると、

 よろしくお伝えしてくれ。」


「はい。」



お互いに裏事情に精通している同士、

いやらしい笑いを浮かべた。


教頭だけが、

きょとんとした顔をして俺たちの会話を聞いていた。

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