緋~隠された恋情
俺の両親は海外に駐留している外交官。
まあ、そうは言っても公務員だ。
大した地位ではない。
しかしオヤジの父親、つまりなくなった祖父は、
この学園の創立者であり、代議士の叔父は、
理事長を兼ねている。
まだ校長たちさえ知らないことだが、
今、俺は、あくまで一介の教員だが、
いずれはここの学園長として、
受け継ぐことになっている。
それは、生まれた時から決められていた。
その事実は俺が成長し、
今の人格を形成する大きな要素になった。
将来を決められている人間というのは、
自由という翼をもぎ取られる代わりに、
決められたレールを上手に進めるように、
お膳立てされ保全され、
将来の不安という文字は知らずに生きることができるのだ。