あなたの想いは誰に??
千里side
俺の腕の中をすり抜けていく夕希の姿に胸が痛い。
頬に残る温かさ。
さっきまで腕の中に居たはずの夕希が付けていた香水の残り香が俺を取り巻いて離さない。
俺は、なんで素直に言わなかった。
なんで俺はちゃんと『好きだ』と伝えなかった。
俺はなんで夕希だけを見ていたのに言わなかった。
「俺にはっ…………夕希しか要らないっ………。」
たった1人の空き教室に虚しく声が響く。
『千里。』
優しく俺の名前を呼ぶ夕希はもうどこにも居ない。
「もう1度っ………俺を好きになってくれっ……。」
この流れ出す涙を止める術を誰か俺に教えてくれ。
千里side end