君が居る世界
「…くしゅんっ」
「ユウナ、風邪でも引いてんのか?」
「…ううん。でも急に、くしゃみが……くしゅん!」
「…しょうがねーなぁ」
さっきまでは元気に笑っていたユウナが急にくしゃみを連発するので、俺は自分が着けていたネックウォーマーを無理やりユウナの首に通した。
驚いたようにというよりも、心配そうな瞳が俺を見つめる。
「え…、貸してくれなくても大丈夫だよ。こんなくしゃみぐらい、大したことないし…」
「俺は別に寒くねーから、ユウナが使えばいい」
「そんな…。それでリョウスケが風邪引いちゃったら、何も意味ないじゃん。毎日遅くまで残って自主練するほど、努力してるのに…」
「そんな俺の自主練に付き合って野球部のマネージャーが風邪引く方が、よっぽど悪いっつうの。俺のことは心配しなくていいから、黙って借りとけ!」
俺はユウナの首元のネックウォーマーをしっかりと固定させて、ぐしゃっと頭を撫でた。
……ユウナにはいつも感謝してる。
俺の勝手な自主練にも付き合って、今日みたいに帰りが遅くなっているのだから。