学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……中の様子は俺の想像を遥かに超えるものだった。
 歪んでいたのはドアだけではなかった。車両全体が先頭に向かうに連れて斜めに歪んでしまっている。
「い、いったいどうなってんだ? この電車は脱線してしまったのか? でも、さっきまでは普通に電車は走っていたはずなのに、一体いつの間に?」
 何がなんだか自体を整理しきれない俺の視界に、数人の人間の姿が飛び込んできた。
「えーん、痛いよお、痛いよお母さん」
 床に座り、シクシクと泣き続けるまだ幼い一人の女の子、そしてその脇には頭から血を流して倒れている母親らしき女性の姿。
「だ、大丈夫ですか? しっかりして下さい」
 俺は慌てて女性を抱き起こそうと手を伸ばした……が。
 スウッ。
 俺の腕は女性はおろか、子供たちに触れる事さえもできずに通過してしまった。
「え?」
 スカッ。スカッ。
 何度試してみても腕は、身体は、虚しく彼らを通り抜けてしまう。まるで彼らが幽霊であるかのように。
「お、おい、大丈夫か? お前はケガはしてないか?」
 しかし、俺の問いかけに女の子は見向きもしない。
 ……やはり、この女の子には俺の姿は見えないらしい。
 俺は彼女らに何をしてやることも出来ず、ただ前の車両へと向かう事しかできなかった。
 ……先頭から2両目はひどいありさまだった。完全に横倒しになった車両、そして数人いた乗客はみな壁に叩きつけられたのだろう、酷く血を流している者や足が腕が奇妙な角度に折れ曲がっている者。うめき声を上げる者、そして……どうやら息を引き取っている者までいた。
「う、ひ、酷いありさまだ」
 そして、やっぱり俺は彼らに触る事はできなかった。
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