学園怪談2 ~10年後の再会~
第98話 『予知』 語り手 斎条弘子

 能勢さんの怪我は幸いにして大きな物ではなさそうだった。それでも彼の容体は心配なところだ、私は机でこさえた即席ベッドに横たわる能勢さんに声をかけた。
「能勢さん、やっぱりこれ以上は……」
「最後まで続けてくれ」
 私の言葉を遮るように能勢さんがしゃべる。少し苦しそうな声だが、どこか決意を秘めた声に私は気圧された。
「しかし能勢、どうやったら井上孔明の呪いから身を守ることができると思う? 無理せずに何とかして外に出ることを考えた方がいいんじゃないか?」
 大ちゃんさんが能勢さんの肩を掴みながら声をかける。
「井上孔明は確かに学園に大きな呪いをかけた。それが原因で学園に様々な事件が起こったのも事実だろう。でも島尾さんも言ってたように、今……この半世紀近くに渡る悪夢に決着を着ける事が出来るなら、それを行うのは俺たちの使命にちがいない。どうにかして助かる道を探さないと」
 しかし、具体的にはどうしていいかわからない。島尾さんは怪談を続けるようにと言っていたが、それだけで本当に井上孔明の封印が成功するのだろうか? 
みんなが黙る中、斎条さんが一人真剣な眼差しで口を開いた。
「私が……なんとか力になれるかも」
 その言葉に一同が声を無くしていると、斎条さんは真剣な面持ちのまま続けた。
「私には少しですが、未来を断片的に予知する力があります。その能力を使えば、これから必要になる何かが、断片的にでも飛び込んでくる。きっと何かの手がかりを掴む事ができると思います」
 一瞬の沈黙……その後、全員が互いの目を見やった後に頷いた。
「やって弘子ちゃん」
「頼むよ、君のその力に頼るしかない」
 ……私は、この10年の間にできた友達の誰よりも、ここにいる6人の知り合いが頼もしく、そして近しい存在に感じた。生命の危機を共有する者が仲良くなるのに時間はいらない。だから、普通なら笑い飛ばしてしまうような『予知』という言葉にも誰も笑わなかった。
「では、始めます。私が見る事のできる予知の映像はこれを通してみなさんにも見る事ができるはずです」
 そして、斎条さんは何やら小さな水晶玉と、いくつかの札のようなものを取り出した。
 いよいよ、斎条さんによる『予知』が始まった。

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