学園怪談2 ~10年後の再会~
第99話 『手掛かり』 語り手 石田徹

 さあ、ついにここまで来た。徹さんが話し終えれば、最後の一周が終わった事になる。時刻は4時。もう間もなく夜明けだ。いろんな事があったし、能勢さんや、斎条さんの負傷はあったが、なんとか最後までたどり着けそうだ。このまま無事に朝を迎え、全員が井上孔明の呪いに打ち勝つ事ができるのだろうか?
「じゃあ、俺の最後の話を始めようか」
 徹さんはいつの間にかスーツに着替えていた。今までの様々な職業体験を察するに、最後は普通にサラリーマンだったりするのだろうか?
「徹さん、結局のところ、今はいったい何をやられてるんですか?」
 待ち切れずに私は先走る。
「今の俺はね。実は教師なんだ。まあ、非常勤なんだけどさ」
 意外だった。まさか徹さんの最後の職業は教師だったなんて。彼には……失礼だが勉強がそれほど出来そうな印象がない。いったい何の科目を教えるんだろうか。

 ……。
 俺は様々な職業を体験するうち、この世はどこに行っても、何をやっても霊的なものが溢れているのを感じた。よく怪談を聞くと、昔は墓場だった、戦争時代の病院や防空壕の跡地でたくさんの人が死んでいる場所、無念を残したまま死んだ。数えきれない程の話が出てくる。そんな事を言っていたら、この世のどこを探しても土地という土地で人は死んでいる。
そこらじゅうが無念の情感で溢れているに違いない。そして、そこで不幸な事件や奇怪な事が起こるのなら、もう自分の力でそれらを乗り越えていくしかない。
 俺の住む大切な町……新座。家族の、友達の暮らす大切な場所。そして、この街で最も霊力の高い様々な怪奇現象が起こる場所……新座学園。
 俺は決めた。いずれ生まれる子供も通うかもしれない俺の母校。様々な思い出を刻む大切な場所である学校。俺はこの学校で様々な生徒たちの安全を見守りたい。その想いから必死で勉強した。もともと大して頭もよくなかったから勉強は本当に大変だった。紫乃にも迷惑をたくさんかけたけれど、それでも紫乃は嫌な顔一つ……くらいはしたが、見守ってくれた。そして……そして俺は新座学園の国語の非常勤講師になることができた。
 ある日、学園長が俺を学園長室に呼び出したんだ。
< 280 / 296 >

この作品をシェア

pagetop