学園怪談2 ~10年後の再会~
 3階では既に大介がスタンバイしており、エレベーターの到着を確認した。
 ガッ! ゴゴッ!
 大介はヘラをエレベーターの下の隙間に差し込み、全体重を柄の部分に乗せて踏ん張った。
「いいぞ能勢! 行けえええ!」
 大介の声がエレベーターの昇降路を通って下の能勢に伝わる。
「少しの間、頼むよ大ちゃん!」
 能勢は懐中電灯を取り出すと、エレベーターの無い空洞に上半身を滑り込ませる。
 ゴゴン! ゴオゴン!
 すると、突然、怒ったように3階のエレベーターが震え始めた。何もボタンを押していないのに下へ向かって下降を始めたのだ。
「そんなのお見通しなんだよ! 絶対に能勢のとこへは行かせねえ!」
 大介が鉄の柄を下へ押し返す。物凄い勢いで跳ね上げられそうになりながらも、その手は絶対に離さない。……下でロザリオを捜索中の能勢の命がかかっている事は明白だった。
 下で、能勢は懐中電灯の光を頼りに入念に底をチェックする。
「……あ、あった!」
 小さなロザリオが壁との僅かな隙間にはまり込んでいる。
「ぐおおおおお! の、能勢、早くしてくれ! もう持たないぞ~!」
 鉄が曲がり、エレベーターは火花を散らしながら下降を始めようとする。
「待って、もう少し……くうう、固くはまり込んでる……」
 ググググ! メキメキメキ!
 大介の腰の古傷が悲鳴を上げる。激痛が走り、くじけそうになるが、それでも手を離さない、力も緩めない。少しでも力が逃げたら、一気にエレベーターは下にいる能勢を押し潰すだろう。そんな事をさせる訳にはいかない。
「もう少し……取れた!」
 バキン! ゴオオオオオ!
「能勢えええ! 折れたぞ! 逃げろおおお!」
 鉄の棒はへし折れ、大介はもんどりうって倒れた。エレベーターは急降下をはじめ、下にいる能勢に襲いかかる!
 ガコオオオオオオン!
 轟音が校舎内に響き渡る。
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