学園怪談2 ~10年後の再会~
「能勢! 能勢! 大丈夫か!」
 3階から転がり落ちるようにして戻ってきた大介は、エレベーター前に額から血を滴らせる能勢を発見した。その手に小さなロザリオをヒラヒラさせ、大介に会心の笑みを見せる。
「だいちゃん、間一髪セーフだったよ。もう少し遅かったらペチャンコだったけどね」
「能勢! よく、よく頑張ったな」
 大介は自分の腰の痛みを庇う事もなく、能勢に肩を貸した。
「さあ行こう! みんなが待ってる」
 二人の勇者はお互いを支えるようにして歩きだした。
 
 ……用務員室。
 島尾さんと一緒に用務員室にたどり着いた私が見たものは、用務員さんを取り巻くように飛びまわるいくつもの人魂だった。
「大丈夫か! おい、おい!」
 島尾さんが用務員さんの肩を掴んで揺さぶった。
「……邪魔を……するな! もうじき……もう……我は……蘇る」
 その口から聞こえてくる声は普段の彼の声とは違った……教室で聞いた、井上孔明の声だった!
 窓の外には大量の人魂が浮遊し、ラップ音やポルターガイストもこの部屋は他の部屋とは比べ物にならないくらいに強い事が窺えた。
「もう……観念しろおおおおお!」
 吠えるように怒鳴る用務員さんの体が空中に浮き上がる。
「大変だ! 井上孔明の魂が用務員さんに乗り移っている」
 島尾さんは何やら手で十字を切りながら島尾さんに近づく。
「がああああ!」
 ドカアッ!
「ぐあああ!」
 用務員さんから目に見えない衝撃波のようなものが放出され、島尾さんを吹き飛ばした。島尾さんは強かに壁に打ち付けられた。
「次は……お前だ!」
 井上孔明の乗り移った用務員さんの体が照準を私に変える。
 私はどうすることも出来ずに手を前に突き出して目を閉じた。
「ぎゃあああああああ!」
 すると、私に衝撃波は襲って来ず、目の前で用務員さんの体は胸だけを天に突き出すように、逆くの字に折れ曲がって大量の煙を吐き出した。
 バタン!
 そして、その煙は部屋の中心に集まって何やら人の形を取り始める。
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