学園怪談2 ~10年後の再会~
 エピローグ

 ……夏休みも明け、学園は相変わらず騒々しい毎日が続いた。
「こらあ~お前たち! こっくりさんをするなと言っているだろうが!」
 放課後の教室に徹の怒声が響いた。
「うわあ! 逃げろ~!」
 逃げる生徒達はみんな笑顔だった。
「ったく、しょうがないな」
 徹は後片付けを終えると、学園長と用務員さんに挨拶をして帰った。
 ……。
「お帰り徹」
 家では紫乃がエプロン姿で出迎えた。愛娘は歩行器に乗せられて泣いている。
「ただいま。紫苑、今日も元気だな~」
 徹と紫乃は愛娘が通うであろう新座学園をこれからも見守り続ける。

 ……。
 大介と能勢はその後、二人でジャズバーをオープン。地元のコアな客を集めて毎日忙しそうにしている。客に聞かせる能勢、大介の怪談トークは地元の名物に。

 ……。
 斎条は相変わらず世界中を旅行して色々な怪談収集を楽しんでいる。

 ……。
 淳はエッセイストになり、雑誌の記事などに怪談の連載を執筆している。

 ……。
 私は島尾さんが事件の朝、別れ際に言った事を思い出した。
「怪談は悪いものと決め付けられがちだ。霊が集まってくるとか言われている。でもな、本当はそうじゃない。怪談をする事で子供たちに注意を呼び掛ける事が出来る。また全国で怪談を行えば、霊を一か所に留めず、バランスよく散らすことも出来る。だからな、怪談を語り継ぐ事は必要な事なんだ……もちろん、遊び半分で霊を呼んだり、不用意に近づく事は避けねばならないがな」
 
 ……私はきっと今後も怪談を聞き、自分でも話していく事だろう。でも、それは使命感とか、義務といったものでなく、あくまでも怪談に潜む魅力である『恐怖』、『探究』によって欲望を満たすためである。なぜなら、私は今後の人生で、どれだけの怪談に触れていけるのかと思うだけで、また新しい活力が湧いてくるからだ。そんな単純な動機でもいいと思った。もちろん、自分の体験から危険な事は極力避ける必要がある事は十分に承知している。その上で私は怪談を続ける。

 ……さあ、新しい怪談への扉を開くとしよう。


〈完〉


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