学園怪談2 ~10年後の再会~
……。
 今年も白熱したゲームが行われている甲子園。あそこはよく魔物が棲んでいると言われているけど、俺は高校3年の時に行って……見てきたよ。本当の魔物を……。
 ……全国高校野球選手権大会。高校球児にとって夢の舞台甲子園。俺は高校3年の夏に甲子園出場を決めた。その夏、俺は7番ファーストのオーダーで出場していた。もうこの時は腰を痛めていて投手にはなれなかった。
 医者から無理はしないようにと釘をさされたものの、最後の甲子園を目指した努力で掴み取ったポジションだった。
 ……一回戦。相手は選抜のベスト8校、長野県代表の岱聖商業高校だ。強敵だ。でも俺たちは負けない、絶対に。
「山本! 頼むぞ、お前の1発で決まりだ!」
 2対2の同点のまま迎えた最終回。9回ウラの俺たちの攻撃。2アウト、ランナー二塁で迎えた俺の打順。ここで1ヒットでればサヨナラだ。
「いけ~! 大ちゃん頑張れ!」
「あ、それ! 大介! 大介! 大すけべ!」
 聞こえる。能勢の、徹の応援の声が!
 ピッチャーの投げた速球が遅く感じた。俺の振りぬくバットがボールに当たってヘコむ瞬間まで分かったような気がした。
 ……ぐうう! うああああ!
 ズキンと傷む腰を庇いながらも、俺は全身全霊の力でバットを振りぬいた。
 カキィィィィィン!
『打った~! 打球はライト線を破ったぞ~』
 ……観客の歓声も、アナウンスの声も全てが遠くに聞こえた。俺はまるで棒にでもなってしまったかのように硬くなった自分の足を前に進めた。大丈夫だ、一塁までは余裕で間に合う。二塁ランナーはチーム一の俊足を誇る柳田だ。奴ならこのあたりで帰って来れる。この試合……勝った!
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