オレンジ







「好きだ、バカ」



鼻が付きそうな距離でそんなことを言うもんだから、僕は咄嗟にそのムカつく口許へと一歩を踏み出した。驚くこいつ。してやったりな僕。

離れた唇を、顔を真っ赤にして押さえるこいつに、僕は同じ真っ赤な顔で返事をした。


「告白までバカ呼ばわりはないでしょうよ。このバカ」


かっこよく笑ったつもりの僕の顔を、オレンジはどんな風にこいつの目に映したのだろう。


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