愛を知る日まで





ガキの頃、殴られる事も嫌われる事も恐くなかった俺が最も苦手とした事。


――病気。これだけはどうしようもなかった。


殴られる痛みと違って、原因の分からない何時終わるか分からない辛さ。


そしてやっかいなコトに、どういうワケか心までもが弱くなって普段なら絶対感じない心細さが、ひょっこりと顔を覗かせる。



あの施設で、風邪で熱を出した俺に優しく看病してくれるヤツなんか当然いるはずも無く。


高熱で痛む身体と止まらない寒気にただ耐えながら『死にたくない、死にたくない、死にたくない』と必死に願い続けた。




…今思えば、淋しかったんだと思う。


病気の時に抱く独特の漠然とした不安感。あれから救って欲しかったんだ。


抱きしめて「大丈夫だよ」って。安心させて欲しかった。


けれど、その頃の俺には当然その気持ちが“淋しい”だとか“誰かに甘えたい”だとかと分かる筈もなく、ただどうしようもない不安に耐えるばかりだった。





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