愛を知る日まで
キッチンに立つ真陽の隣に並んで、俺は何をするでも無く彼女の手元を覗き込む。
「そんなに見られてるとなんか緊張しちゃう。」
「だって楽しいんだもん。俺が作るときと全然違って、真陽が料理してると魔法みたいに綺麗にサクサク出来ていってスゲーなって。」
俺がそう言うと真陽は照れ臭そうに笑って
「誉めすぎだよぉ。失敗出来ないじゃん。」
なんて言いながら器用に胡瓜を刻んだ。
真陽は、俺が思っていたよりもずっと料理が上手くて器用だった。
時々どんくさい真陽の事だから、もっと焦がしたり指切ったりとかあるかと思ってたけどそれは俺の偏見で、彼女の手際は実に良かった。
そのテキパキと美味そうな料理が出来ていく様を、俺は面白がって夢中で見ていた。