愛を知る日まで






「…んー…」



目を開くと、見馴れた天井が映った。


首を動かして暗い部屋を見回すと、荷物をまとめた段ボールが積んであるのが見えた。



…ああそっか。引っ越しの準備、途中までしてたんだ。今日中に終わらせなくっちゃ。



急激に頭が冴えて同時に今見ていた夢を忘れていく。




…なんだろう。とても幸せな夢を見ていた気がする。


思い出そうとしても、もう夢はその輪郭すら残していない。


けれど。



ふと、自分の頬から何か伝った事に気付き触れてみると


「…涙…?」


その雫を指先に受け止めた瞬間どうしてか、胸が切なさでいっぱいになった。





荷物が片付けられ殺風景になった部屋に、未だ名残惜しそうに掛けられているカレンダー。


最後の一枚になるまで、あと2日。










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