愛を知る日まで






真陽、怒るかな。

やっぱちょっとズルかったかな。



そんな不安を抱えながら、俺はぬくもり園に最後のボランティアに向かった。



ギリギリまで俺が発つ事を真陽に言わなかったのは、急に決めた事でバタバタしてたからってのは言い訳で。本音はやっぱり淋しいからだ。


予め言っておいてしんみりされるのも。引き留められても背中を押されても、やっぱり俺は淋しくなっちゃうだろう。


もし「行かないで」なんて言われて抱きしめられでもしたら、俺は素直にそれに従ってしまう自信がある。


だから、ギリギリまで言わなかった。


もう絶対、後戻りできなくしてから、あっさり出発を告げた方がいい。


さよならじゃないんだ。ちょっと行ってくるだけなんだ。


いい男になって真陽を迎えに来るために、ちょっとだけ。



だから、淋しくなんかないって自分に言い聞かせるため、俺は出発の2日前まで真陽に何も言わないままでいた。






< 210 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop