愛を知る日まで

期待なんかしちゃいねえ








この腐りきった環境が外部になかなか発覚しなかったのは


当然どいつもこいつもチクりによる施設長の“折檻”をおそれていたから。



そしてなにより、みんな分かっていたんだ。


誰もこの地獄から助けてくれるヤツなんかいないって。


みんな諦めていた。もちろん、俺も。




確かあれは、俺がまだ小学校にあがってすぐの時だったと思う。


既に施設長に目を付けられてた俺はある日、顔をボコボコに腫らしたまま学校へ行った。

担任だった若い女の教師はそれを見て驚き声を掛けてきた。「どうしたの。だれがやったの。」と。


俺はべつにチクるつもりでもなけりゃ黙ってるつもりもなかったので素直に「施設長に殴られた」と答えた。



その日の午後、担任と一緒に校長室に連れて行かれるとそこにはどういうワケか施設長がいた。


ご丁寧にスーツにネクタイまで絞めてニコニコと愛想の良い笑顔まで浮かべてる。


「柊、怪我はどうだ。心配してたんだぞ。」


べたっとした猫撫で声で聞いたこともない台詞を口にしながら頭を撫でてきた施設長に俺は鳥肌が立った。



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