愛を知る日まで



--うちの子供達は腕白でねえ。元気が一番がモットーではあるんですが、有り余ってしまって喧嘩が絶えないんですよ。

昨日も随分派手にやらかしましてねえ。またこの柊が負けん気の強いヤツで高学年相手に平気で殴りかかっていくもんだから。

私達も必死で止めたんですけどね。さすがに高学年相手に返り討ちでこの有り様ですわ。

え?私がやった?まさかそんな!

なんだ、柊。昨日叱られたコトまだ根に持っていじけてるのかー?しょうがないヤツだなぁ。--



校長室の立派なソファーに座ってニコニコと喋る施設長。


それに「そうですか、それは大変ですねぇ」と相槌を打つ校長と担任。



そんな光景を見ながら俺は子供ながらに心の中で嘲り笑った。


安っぽい茶番劇と自分の言動の迂闊さを。




結局、救いの手は差し伸べられなかった。別に期待しちゃいなかったけど。




「学校入って知恵が付いたか?チクりなんて可愛く無いことしやがって。」


その夜の折檻は一際ねちっこかった。


さすがにこれ以上怪我を増やすのはまずいと思ったのか、ぶん殴るんじゃなく何回も水風呂に沈められた。


息が出来なくて朦朧とする意識の中で


「誰にチクったって無駄だぞ。てめえみたいに身寄りもねえ何の価値も無いガキなんざ誰も救っちゃくれねえんだからな。」


そう言って悪魔のように笑う施設長の顔が見えた。





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