初恋
第三章「優しさ」
   加奈SIDE

アイツはもう気づいたのだろうか?

名前を聞いたときのあの反応...。

怖い...アイツが私を再びみじめな人生へと連れ込むのだろうか?ちさは...ど

うするんだろう?そんなことを考えていると授業の終わりのチャイムが鳴った。

「加奈、次移動だよ?」

「...あぁ。ちさ、先に行ってて。」

「...うん。大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫!!すぐ行くから!」

そう言うとちさは心配そうな顔をして1人で教室を出た。 

ちさに心配かけたくない。もし私がこれ以上仲良くなってしまったら私がイジ

メられた時にちさが離れにくくなる.....。

もう行こ。 そう思って立ち上がった。

次どこだっけ? 化学室? 早く行かなきゃ...

何かフラフラする.....。もうだめだ。 気持ち悪い。

すわって壁にもたれた。 どぉしよう、ちさが心配する。そんなことを考えて

いると、フワッと体が浮いて、意識がなくなった________


優SIDE

あぁ~今日はもー授業受ける気ねぇな...

そんなことを考えていると、フラフラしている加奈が廊下を歩いていた。

 大丈夫か? と思っていると....ガクンッと膝をついた。やばいだろ.....

そう思って一瞬ためらったが助けに行った。



  加奈SIDE

目が覚めた。 ん...ここ保健室?

何か重い。 ムクッっと体だけ起こすと、私が寝ている上ぶとんの上に頭だけ

のせて寝ているアイツが...。

Why? なぜ?

足をずらすとアイツが目を覚ました。

「お....おう!!大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます。」

そくにお礼を言った。するとアイツはフッと笑った。

「...で、逃げ足で走るか?」

「ハ?」

「駅で助けたときと同じ言い方だし」

なんでコイツは笑っていられるんだ?...ってかなんで笑ってんだ?

ってか...

「あんたが運んで来てくれたの?」

ちょっと黙ってうなずくコイツ。

「俺、もう行くわ。お大事に。」

「ありがとね。」

そう言って保健室から出て行った。

何で助けてくれたの? 私のことイジメてたのに...。

何で優しくするの?償いのつもりならやめて...。苦しい。

イジメられる心配がなくなったのに、いろんな考えが頭をグルグルと駆け巡る。

償い?何かあるの?やっぱイジメられるの?怖い。苦しい。イヤ。

胸が痛くなってギュッと胸元をにぎった。呼吸が荒くなってきて汗がダラダラ

と流れ出る。

ジャッっとカーテンが開いた。

「山谷さん、大丈夫?」

保健の小野先生だ。

心配そうに顔をのぞかせる。小野先生はスゴくキレイで優しくてカワイイ。

だから男女共に人気がある。

「あ....ハイ。もう大丈夫です。」

「すごい汗、もう少し寝てなさい。」

「ハイ.....あの....。」

「本当に山谷さん、山崎くんの背中でものすごい汗かいてうなってたわ。」

「そ.....です...か。」

「ええ。もう少し休んでてね。ちゃんと先生には言っておいたから。」

「はい。」

私がうなずくと先生はカーテン閉めて仕事に取り掛かった

もう少し寝てよう。そして目をつむった______

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