1歩前。
 何年も変わらないこの景色。きゃあきゃあと、楽しそうに遊んでいる車椅子の小さい子たち。ゆっくりだった。まるで、一時停止したかのように。なんでこうなったのかは分らない。
 あの時は、そうだ。入学式だった。私の人生が狂った日。私、永井皐月は昔から病弱で
病院に入院しては、退院して。発作がおきたらまた、入院。そんなことを繰り返してはや11年。5歳のときからだった。もとから、お父さんが心臓病で、お父さんは、3年前に他界してしまった。そのお父さんの心臓病を私が持ってしまった。お母さんは、お父さんが大好きだったから、私がお父さんの生まれ変わりだって言って、可愛がってくれた。
「皐月、いい?あなたはお父さんなのよ。だから、激しい運動はしちゃだめよ?してしまったら、一生お母さんにあえなくなるの。わかった?」
それは、幼いころから母に言われていることで、まだ5歳なのに私はもう助からないと
分っていた。
「はい・・・、お母さん。」

 ただ、死ぬのが怖かった。まだ生きたい、生きたい。死にたくない。怖い。そんな不安と恐怖が押し寄せてきた。
 だけど、私の生きる柱となってくれたのは、幼馴染の竜也だった。元気で明るくて、
騒がしくて、いっつも病院に来るなり看護師さんに怒られていた。そんな姿がまるで、小学生のときと変わらなくて、笑ってしまう。だから少し生きる元気をもらっている。
 そして、それが狂ったのが高校の入学式のことだった。友達の夕花ちゃんも、竜也もいる高校だったから心から安心だった。
 入学式が終わって、竜也と屋上で話していた。
「なあ、皐月、また病院行くのか・・?」
「うーん・・わかんないや・・・」
「・・・・、死ぬなよ・・」
「?うん?」
なんだろう、竜也の顔がすごく悲しいような顔をしている。
「俺、勘、いいからさ・・・。」
「でもさ!竜也がいるから安心だよ!!竜也、勘より、運とかいいからさ!!」
「うっ!うん!!」

ここまでは安心だった。やっと、いえるのかな?

「私・・・」

カンカン・・・・

「竜也のことが・・・」

ガチャ・・・

「えっ・・?!」

カツン・・・カツン・・・

「おい!待て!!やめろっ!!」

「え??」


         どんっ

「きゃっ!!!!!!」

策から落ちてしまった。

「何してんだ!!助けろ!!*×△〇!!なに馬鹿なことやってんだよ!!」

名前がよく聞こえなかった。だれだろう?私を突き飛ばしたのは・・・。

「だって・・・わたしっ・・・・!!」

「あああああああああああああああああああああ!!!!」
 女の子の泣き声が聞こえてきた。

「だ・・・・れ・・?」

「だいじょうぶか?!」

「竜也・・・」

「今助けるからな!!」


「好き・・・・・・。」

     「あ・・・・」

手が滑ってしまった。掴んでいた棒から手が外れた。
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