君には言えない
私はアルバムに夢中になっている帝人君

の胸を押して床に背をつかせ、上から覆

い被さった。

「っ!?ど、どうしたの武藤さん?」

「っ...」

ちゅ...と帝人君の唇に軽く唇を押し当て

てキスをした。

「...っ!?な、なに...っ!?」

そこでハッと我に帰った。

「ごめんなさい...ごめんなさい...っ」

あなたが好きなんです。

出かかった言葉を私はぐっと堪えた。

「武藤さん...冗談でやったんだよね?」

『冗談』そんな一言で私の想いはいとも

簡単に崩すことができるのか。

『冗談なんかじゃない』そう、言いたか

った。...でも、この想いを彼に知られて

拒絶されるのが怖い。

うん...冗談だよ、ごめんなさい

そう言うしかなかった。

「そっか...なら良かった。こんなこと、

好きじゃない人にやっちゃいけないよ?

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