君には言えない
「ね?」と優しく言って、彼は私の体を

ゆっくりと起こした。

「武藤さん...ごめん、今日はもう帰るね

。紅華ちゃんの写真ありがとう」

「ううん...全然いいのよ、私こそありが

とう楽しかった」

彼を玄関まで見送ったあとの記憶はない



ただひとつ覚えているのは彼のぎこちな

い笑顔と「じゃあね...」という声と去っ

ていく後ろ姿。

その後は自分がどうしていたのかは覚え

ていない。

気づいたら朝で、ああ、このまま寝てし

まったんだと思った。
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