天神楽の鳴き声
「そうすれば、あの病だって自然と治まりましょう。あまりにこの事態が長く続けば、民から不信を買います」

「だけどなー」
「大事にするのは宜しいですが、あなた様が護るのは…失礼と存じますが、雛生様という小さなただ一人の存在ではいけないのです」

そんなの、わかってる。
志臣は机を睨み付けた。

結局の所、帝、という最高権威を持ったところで、何も変わらないのだ。
雛生の天神楽の破壊という意見は、確かに一理ある。こんなくだらない、大切なものを大切にしてやれない人生が続くならいっそと思う。
けれど、それを行うには余りに危険を伴いすぎる。

そして、その危険を侵してまで手にいれようとは思わないのだ。くだらなくとも、憎んで止まないわけではないから。

おれの願いは―…
君に。


戸が勢い良く開く音がした。見ると、莉津が肩で息をしながら必死の形相でこちらに歩み寄る。


「雛生様が、消えました…!!」
「…え?」


おれの願いは―…

―…
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