恋萌え~クールな彼に愛されて~

「NYで俺が彼女に出会った時は、ヨーロッパからの飛行機代で有り金をはたいた後で、しばらく食べ物らしい食べ物を口にしていなかったらしい。
ヨーロッパでも食うや食わずの生活だったらしくて、さっきも言ったように性別の区別もつかないくらい痩せていたし。言葉は悪いが……もう乞食同然だった」

「よく 声をかける気になったわね」


NYなんていう治安の悪さが代名詞のような街で
行き倒れているような人間は それこそ言葉は悪いが
何処の馬の骨ともわからないだけでなく
危険人物の可能性も十分に考えられる。
よく助ける気になったものだと梨花は半ば呆れた。


「ご飯、ご飯…白いご飯食べたい、と何度も呟いていたから気の毒になったんだ。長く日本を離れていると食べたくなる気持ちはとてもよく分かるから」


その塚本の一言を聞いて梨花は思わず噴出した。


「なんだ?……可笑しいか?」
「可笑しいわよ」
「そうか?」
「そこは普通、日本人だとわかったからって言うところよ?」
「ああ…そうか。そう言われてみればそうだな」


なるほど確かにそうだな、と腕組みしながら納得している塚本の様子が
更に梨花の笑いのツボをついてしまったようで、彼女が笑い止んだのは
それからしばらくしてからだった。


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